100種類以上から厳選!お悩み別「コンドーム」の選び方(後編)

100種類以上から厳選!お悩み別「コンドーム」の選び方(後編)

コンドームは男性が使うもの。そう思ってしまうと、選ぶのも購入するのも男性の役割ということになります。それは、着けるかどうか決めるのも男性、という考えにもつながることに……。

「女性のデリケートな部分に触れるものなので、女性も主体的にコンドームを選んで!」と教えてくれたのは、学校で養護教諭をするかたわら、コンドームソムリエとしてコンドームの基礎知識から選び方を全国で伝授するAiさん。

「女性のためのセクシュアルウェルネス」をテーマに、さまざまな「性の専門家」をお招きし、性をもっと正しく、楽しく学べる場所を目指すYouTubeチャンネル「bda オーガニック|セクシュアルウェルネス塾」

Aiさんによると、現在日本で流通しているコンドームは100種以上。そんなにも選択肢があるというのはうれしい驚きではありますが、何をどう選んでいいかわからなくなってしまいそう。前篇ではAiさんに自分好みのコンドームを選ぶためのポイント①~⑤をうかがいました。

後篇では、具体的にどんなコンドームがあるのか解説していただきます。

*こちらの記事は前編・後編に分かれています。前編はこちら >>

YouTube動画(下に記事が続きます)

聞き手&text=三浦ゆえ(ライター)

─Aiさんが用意したのは、水を入れた3つのコンドーム。

コンドームソムリエAiさん(以下、Ai):3種の素材を比べるために用意しました。私はコンドームを世界でいちばん小さな下着だと思っているんですね。自分に合う素材、形を見極めるためには、一度細かな点まで見て、触れてみるとわかりやすくなります。

─真ん中がポリウレタン製、0.01mmから0.02mm台の薄~いコンドームです。熱を伝える力が高いのも、特色のひとつ。実際手で触れてみると、左右のコンドームに比べてひときわ冷たく感じます。

Ai:ラテックス製、イソプレンラバー製に比べると、ポリウレタン製は薄くて体温が伝わりやすいので、特に男性から人気です。ぬくもりを感じやすいのですね。その一方でご覧のとおり、あまり伸びないというのも特色で、それゆえ着けられる人はかぎられています。私はよく「1サイズしかないデザイナーズブランドのようなコンドーム」と説明しています。

─画面左側にあるのは、ラテックス製のコンドームです。

Ai:コンビニなどでも販売されている、もっとも一般的なコンドームですね。バリエーションが豊富で、薄さや形、ゼリーの有無と種類がいちばん選択肢豊富なので、ラテックスアレルギーがなければ、楽しみの幅が広いと言えます。
弾力があって、どなたにも合いやすい。たとえるなら「ユニクロみたいな」コンドームです。画面右側は、イソプレンラバー製。一見して伸びがいいのがおわかりになると思います。ポリウレタンよりラテックス、ラテックスよりイソプレンラバーという順で伸びがよくなります。

─イソプレンラバーの触感は、弾力がなくフニャフニャとしたやわらかさがあります。

Ai:しっとりとしていますよね。ラテックス製だとゴムによる引っかかりで痛みを感じてしまう女性も少なくないのですが、イソプレンラバーのようにしっとりやわらかい素材のコンドームに変えることで、痛みが和らぐ可能性があります。

─セックス、特に挿入時に痛みが出ることを「性交痛」と言い、悩んでいる女性は少なくありません。いくつかの原因が考えられますが、コンドームが原因になっていることもある、とAiさん。

Ai:対策として、自分に合った素材、そしてゼリーの量が多めのコンドームを選んでください。JEX「ZONE プレミアム」は、ゼリーの量が本当に多いんです。プラスチック製のケースに入っているですが、封を開けてすぐにゼリーがたっぷり塗布されているのがわかります。
コンドームの先端が内側に少しへこんでいて、そこに粘度が高いこってりめのゼリーがふんだんに仕込まれています。

─それこそが、Aiさんが性交痛のある女性におすすめしたいポイントです。

Ai:女性からすると潤滑ゼリーを使ったのと同じぐらいに感じられると思います。挿入時に痛みを感じる方だけでなく、途中で乾きやすい方にも使ってほしいですね。
不思議なことにこのコンドーム、男性にも“生っぽい”感覚だと人気です。ゼリーはコンドームの外側(女性側)にのみ塗布されているので、なぜ男性の感度も上がるのかは謎なのですが(笑)。

─つづいて取り出したのが、「ジェリープッシュ」。唯一無二の斬新なアイデアが盛り込まれたコンドームです。

Ai:パッケージが長方形の形をしていて、中にコンドームとスポンジが入っています。スポンジにゼリーがたくさん染み込んでいて、これをパッケージの外から指で押すことで、コンドームにゼリーが流れていく。
スポンジを押す量で、ゼリーの量を調整できます。「今日は何プッシュしとく?」と潤いをカスタムするのも楽しいですね。ゼリーの購入や使用に抵抗がある方は少なくないのですが、こうしたユニークなアイテムを採り入れることで、ゼリーに対するハードルが下がるのではないかと思います。

─ただ先述したように、ラテックス製のコンドームそのものがゴムずれを起こし性交痛の原因となっていることもあります。

Ai:ポリウレタン製の「オカモトゼロワン(0.01)たっぷりゼリー」も、その名のとおりゼリー多めです。
ポリウレタン製のコンドームは表面がツルツルしていて、ゴムずれの痛みを防げるというメリットがある一方、本来ならゼリーを留めておくことがむずかしいのですが、メーカーの技術で多量のゼリーを塗布できています。
ただポリウレタン特有の硬さがあり、かえって痛みが出る方もいらっしゃるので、一度試してから判断するといいと思います。

─人とコンドームのあいだにも「相性」があるということが、だんだんとわかってきました。使ってみないとわからないものではありますが、いろんなコンドームを使えば使うほど自分との相性が見えてくるものなのでしょう。

Ai:つづいてマンネリ打破、気分転換になるようなコンドームを紹介します。前篇で説明した「④形」に特徴のあるものをおすすめしています。たとえば「インスパイラルS」というコンドームは、インドの女性医師が13年かけて考案した、人間工学デザインのコンドームです。

先端がアシンメトリーの形に膨らんでいて、不思議な印象ですよね。男性がこれを装着すると、ポケットにはまったような独特のホールド感があってすごく気持ちいいそうです。

─面白いのは、女性側の感じ方。

Ai:受け入れるてみると、いつもの相手なのに「別人!?」と思うほど感触が変わるんです。
つき合いの長いカップルにぜひ試してほしいです。マンネリだからといって相手を変えることはできないけど、感触が変わるので気分転換になります。つづいて粒がついているコンドームとして不二ラテックス「SKYN(スキン) インテンスフィール」を紹介します。

─表面に波を描くようにして、しっかりとした粒が並んでいます。

Ai:つぶつぶした突起が施されたコンドーム自体は、さほど目新しいものではありません。だからこそ注目したいのはその質です。
ラテックス製で粒があると、ゴムずれの痛みが出てしまう人も。「SKYN」は粒はしっかりしていながら、しっとりやわらかなイソプレンラバー製なので当たりがやわらかいんです。粒がついてるコンドームを未体験の人に、導入編としておすすめできます。
このコンドームにはほかにも、肌に吸い付くようなやわらかさで、かつ巻きおろしやすいという特徴があるので、男女両方から人気です。

─最後に紹介いただくのは、イラストがプリントされているという、ほかにないユニークなアプローチの「Design CONDOM」。

Ai:コンドームそのものにイラストがプリントしてあるのですが、細い線や色もしっかり再現されていて、装着するとタトゥーをしてるように見えます。好奇心を刺激されますよね。
女性から「コンドームを着けてって言いづらい」「相手がつけたがらない」という悩みをよく聞きます。
そういう場合にはDesign CONDOMを取り出して、「どうなるか見てみたいから、着けてみて!」と提案してみる。あと、日本で売られているなかでいちばんお値段が高いコンドームでもあります。2個入りで1,000円前後。「日本一高級なコンドームを使ってみない?」って誘うのも面白いのではないでしょうか。

─Aiさんのお話をうかがっているとコンドームが実に多様で奥深い世界なのだとわかります。

Ai:コンドームは妊娠や性感染症を防ぐ”プロテクター”として認識されていますよね。つまり「着けなきゃいけないもの」と思うから、「着けさせなきゃ」「いや、着けたくない」となってしまいます。
ですがそれぞれのコンドームの機能や魅力を知ることによって、いつものセックスをよりよくする”エフェクター(効果)”として捉えることもできるようになります。
そうすると、コンドーム選びそのものが前戯になるんです。使う、使わないじゃなくて、「どれを使う?」っていうところから楽しんでもらえたらいいですね。

─コンドームを自分で購入したことがないという女性は少なくないでしょう。「買いにくい」というイメージもいまだ根強くあります。そんな女性に、Aiさんからのアドバイス。

Ai:自分が「買いやすい」と思えるところを探しましょう。私のおすすめは、無印良品と100均ですね。100均にもコンドームが売られていますし、無印良品ではトラベルグッズやウェットティッシュなど衛生用品の並びで販売されています。

シンプルなデザインで遠目にはコンドームとわからないので、買い物かごにポイって入れてレジにもっていきやすいです。コンドームが買いにくいと感じている人は「ここなら買えそう」という場所を見つけ、「買うことに慣れる」ところからはじめてください。

〜編集後記〜

Aiさんのコンドームトーク、終始にこやかにお話されているのが印象的でした。Aiさんは養護教諭のお仕事をされているとのことですが、これからセックスのことを知っていく子どもたちのそばに、こうした大人がたくさんいてほしいと願うばかりです。

しかし大人は大人でコンドームのことを知りません。知る機会もなかったという人がほとんどでしょう。かく言う私も、コンドームがこんなにも種類が多く、細分化されている世界だとは知りませんでした。多くの人のニーズに応えようという、企業努力がうかがえます。

「どれも一緒でしょ」で選ぶのは、あまりにもったいない! Aiさんの「コンドーム試触会®︎」はコロナ禍以降、オンラインでの開催が中心となっているとのこと。一度参加して自分の「推しコン」を探してはいかがでしょうか。

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