“推し”のコンドームを見つけよう!女性のためのコンドーム選び(前編)

“推し”のコンドームを見つけよう!女性のためのコンドーム選び(前編)

「コンドームを使いましょう」ーー私たちはこんなフレーズを数え切れないほど見聞きしてきました。
避妊のために、感染症予防のために。ほんの薄い膜ひとつで身の安全を守れ、気持ちよさに集中できるというのは、人類史上で最も重要な発明品のひとつといえます。

一方で、コンドームを「仕方なくつけるもの」と思っている人も少なくないのが事実。コンドームをつけるセックスとつけないセックスではぜんぜん違う、着けないほうが断然イイと、なんとなく思われている……でも果たして本当にそうでしょうか? 私たちはそう判断できるほど、コンドームのことを知っているのでしょうか?

「女性のためのセクシュアルウェルネス」をテーマに、さまざまな「性の専門家」をお招きし、性をもっと正しく、楽しく学べる場所を目指すYouTubeチャンネル「bda オーガニック|セクシュアルウェルネス塾」

今回のゲストは、コンドームソムリエAiさん。国内に流通する100種以上のコンドームを網羅し、2019年からは、実物を触って嗅いで引っ張れる「コンドーム試触会®︎」を開催しているAiさんから、コンドームの基本と最前線をうかがいます。

*こちらの記事は前編・後編に分かれています。後編はこちら >>

YouTube動画(下に記事が続きます)

聞き手&text=三浦ゆえ(ライター)

コンドームソムリエAiさん(以下、Ai):「コンドーム試触会®︎」などの活動をしていると、女性がコンドームについて発信しているということにびっくりされる方が多いんです。「男性がつけるものなのに、女性が選ぶの?」「女性が選んでもいいのかな?」といった声をよくいただきます。
たしかにコンドームを装着するのは男性ですが、女性のデリケートな粘膜に触れるものでもありますよね。だから、女性にも一緒に選んでほしいんです。

─実際Aiさんの話を聞きにくる8割は、女性なのだといいます。これまでコンドームを自分で買ったことがなく、相手が買ってきたものをただ使っていたという女性は少なくなくありません。

Ai:どんなコンドームがいいのかを主体的に知っていくと、買うことにも抵抗がなくなるんですよ。お洋服と同じで、自分に何が合うのかを把握するって大事。合わないコンドームは、それが原因で痛みが出ることもあります。

─セックスの、特に挿入行為で痛みが出ることを「性交痛」と言います。

Ai:性交痛にはいろんな背景がありますが、コンドームが原因となっている可能性も考えられます。コンドームを変えるだけで痛みが和らいだというケースもあるんですよ。

─国内で販売されているコンドームだけでも100種超。それだけの選択肢があれば自分に合うものを見つけられるだろうと思う一方、何をどうやって選んでいいのかわからなくなりそう……。

Ai:私が100種以上のコンドームを見てきた結果、5つの特徴で分けられるとわかりました。それを基に「推しコン方程式」を考案し、コンドーム試触会などでお伝えしています。5つの特徴を指標として、自身の好みを絞り込んでいくとお気に入りコンドームに出会えるというわけです。その5つとは、

 ①素材
 ②厚さ
 ③サイズ
 ④形
 ⑤ゼリー

です。

─ここからは、各指標ごとにお話いただきます。まずは、①の素材。いまでもコンドームのことを「ゴム」ということがありますが、コンドームとは全部ゴム製なのでしょうか?

Ai:たしかに長らくコンドームは、”ゴム”といわれる天然ゴムラテックス製が主流で、いまでも商品数がもっとも多いです。
ポリウレタン製のコンドームが発売されたのは、20年ほど前のこと。ラテックスでは実現できなかった薄さを可能にした素材で、商品名に「0.01」「0.02」とあるものは、ほぼポリウレタン製だと思ってください。
加えて近年、合成ゴムで作られる素材、イソプレンラバーも登場しました。しなやかでやわらかく、ラテックスアレルギーの人も使えるのがメリットです。素材はそれぞれ、パッケージに記載されています。まずはこの3種の素材を使い比べてみるところからスタートすると面白いですよ。

─素材は、②の厚みと関係する要素でもあります。2013年に史上はじめて薄さ0.01mm台のコンドームが発売されたときは騒然としていたのを覚えています。

Ai:いま日本で売られているなかでいちばん薄いコンドームは、0.01mm台のポリウレタン製です。特に男性は「薄ければ薄いほどいい」と思いがちですが、実際には人それぞれですね。ポリウレタンはやや固く感じられる素材なので、それが苦手という方もいます。装着するときに巻き下ろすのもむずかしいので、ある程度厚みがあったほうがするするスムーズにできると感じる方もいます。

─厚みがあるコンドームには、ほかにもメリットがあるのでしょうか?

Ai:国内でいちばんぶ厚いコンドームは0.12ミリ。感度が落ちると心配されることもありますが、それは長時間楽しめるということでもあるので、好みや状況によって使い分けるといいと思います。
③のサイズについては現在、スリムから太めまで、だいたい4段階に分けられます。ただ、市販されているもの、特にコンビニで売られているものやホテルに備え付けのものは、ほぼ標準サイズのみ。希望のサイズがある場合は、ネットショップなどであらかじめ買い求めておいたほうがいいですね。

─サイズが合わないことを理由に「着けない」選択をする男性がいると聞きます。けれどAiさんによれは、それは着けない理由にはならないとのこと。

Ai:サイズが合わないことで生じるデメリットはあります。巻き下ろしにくいとか、窮屈で痛みが出てしまうとか。それが性行為自体に支障をきたすこともあります。
そうした場合には上のサイズを一度試してみましょう。合わないんだったら、まず自分に合うものを見つけてからセックスを!

選択肢はちゃんと用意されていますから。ただ、①の素材によってもフィット感が左右されることは知っておいてほしいです。衣類でも、ナイロン素材と伸縮性のあるジャージ素材ではフィット感が違いますよね。素材とサイズは、セットで考えてください。

─④は、形状。コンドームの形と聞いてすぐに思い浮かべるのは、筒型で、先端に突起のような空間=精液だまりがあるものです。

Ai:それはスタンダード型やストレート型と呼ばれるものですね。ほかにも、先端に精液だまりのない、きのこみたいな形をしたコンドームもあって、商品名で「フィット」「リアルフィット」と謳われています。精液だまりがないぶん密着しやすくて、フィット感は抜群。
精液だまりの突起部分が奥に当たると痛いと感じる女性もいますし、そうしたお悩みがある場合は一度形を見直してみてはいかがでしょうか。

─ほかにも表面につぶつぶした小さな突起が施されていたり、まるで”別人”になったかのように挿入感が変わったり、といったユニークなコンドームもあります。後篇で詳しく解説してもらいましょう。つづいては⑤のゼリーです。

Ai:コンドームにはもともと巻き下ろしをスムーズにするため、あるいは製品を守るために潤滑剤が塗布されています。⑤では、それとは別に、女性の潤いをサポートするためにゼリーやシリコンオイルがプラスされているものを指します。

─女性で「コンドームを着けたくない」という人に理由を聞くと、潤い不足のところにコンドームで摩擦が起きると不快感や痛みが出るから、と返ってくることが多く、これをゴムずれといいます。

Ai:痛み予防には潤滑ゼリーを使うのがいちばんですが、購入に抵抗があるという声もよく聞きます。
ゼリーがもともと付いているコンドームなら、それを装着するだけで潤いをサポートしてくれます。ゼリーが驚くほどたっぷり付いてるものだけでなく、温感ゼリー、冷感ゼリー、それからフルーツの香り、チョコレートの香りがするものなどバリエーション豊富なので気分転換にもなりますよ。

─コンドームと潤滑剤には、相性があります。潤滑剤の組み合わせによってはコンドームが破損してしまうことも。詳しくは、ラブライフアドバイザー・オリビアさんの解説をご覧ください。しかし、最初からコンドームに塗布されている潤滑剤であれば、その心配はいりません。
記事はこちら >>

コンドームは感染症や望まない妊娠から身を守る「プロテクター」として使うものというイメージが強いが、ユニークな形状やゼリー付きものを採り入れることで、マンネリ打破につながるなど「エフェクター(効果)」を期待できるものでもある、とAiさんは教えてくれます。
後篇でさらに詳しくうかがっていきましょう。

〜編集後記〜

2010年代、女性向けAV「SILK LABO」がブレイクしました。性行為だけを見せるのではなく、セックスに至るまでのストーリーや男女の関係性を丹念に描いたみせたことで話題になりましたが、もうひとつ注目されたのが、「コンドームを着けるシーンが必ずある」ということでした。

それまでの、いわゆる男性を対象としたAVでは、撮影現場ではちゃんと装着しているのに映像になると「ないもの」とされていました。また、直接、間接にコンドームを着けないセックスこそが至高だというメッセージはとても多く、一部の男性はいまなおそう信じています。

女性が求めているのはそうではなく、安全と安心がしっかり守られたセックスなのだということをSILK LABOははっきり打ち出したのでした。女性がセクシュアルウェルネスを考えるうえで、ひとつのターニングポイントになった出来事だったと思います。

そして2020年に入って、コンドームは「女性も一緒に選ぶもの」「着けなければならないものから、よりよいセックスのために着けるものへ」という、新たなターニングポイントを迎えています。この動きを牽引しているのが、今回のゲスト・コンドームソムリエAiさんなのです。

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