自分のカラダを知ってたのしむ!フェムテックの中の「セクシュアルウェルネス」とは?(後編)

自分のカラダを知ってたのしむ!フェムテックの中の「セクシュアルウェルネス」とは?(後編)

「女性のためのセクシュアルウェルネス」をテーマに、さまざまな「性の専門家」をお招きし、性をもっと正しく、楽しく学べる場所を目指すYouTubeチャンネル「bda オーガニック|セクシュアルウェルネス塾」

今回のゲストは、「fermata(フェルマータ)株式会社」のCCO中村寛子さん。同社は、女性のウェルネス課題の解決・支援事業を行う一環として、国内外のフェムテック・プロダクトをオンラインショップ、実店舗にて販売しています。

フェムテックで、女性のセクシュアルウェルネスはどう変わるのか? お話をうかがった前編の模様を、動画未収録分をまじえながらお届けします。

*こちらの記事は前編・後編に分かれています。前編はこちら >>

YouTube動画(下に記事が続きます)

聞き手&text=三浦ゆえ(ライター)

「セクシュアルウェルネス」はまだまだ新しい概念

─前編では、フェムテック市場のなかでも「セクシュアルウェルネス」カテゴリーの中でプレジャーアイテムが取りこぼされていたというお話でした。まずは、現在に至るまでのおおまかな流れを中村さんに教えていただきました。

中村:セクシュアルウェルネスは、WHOもまだ正式に定義していないほど、新しい言葉だといえます。もともとは「リプロダクティブ・ヘルス」といって生殖、つまり妊娠・出産に意識が向けられたものが、それも含んだ「セクシュアル・ヘルス(性の健康)」への意識へと変容していきました。
疾患をはじめとする具体的な困りごとがあって、それを解決するためのプロダクトやサービスが求められるようになったんです。
それに加えて、安心、安全な環境で、その人が望む性的な満足感が得られる状態であることを示しているのが「セクシュアルウェルネス」です。時代とともに、女性自身が自分を楽しむ、自分を愛することが大事だというふうに意識が変化してきたのだと私は考えています。

─東京・六本木にある「New Stand Tokyo」では、fermataが国内外から厳選したフェムテック・プロダクトが販売されていますが、そのなかにはプレジャーグッズも含まれます。

中村:私たちも「どういう反応があるんだろう」と思いながら取り扱いをはじめたのですが、実際、店舗でお客さまからとてもポジティブなフィードバックがすごく多いんです。
これまでは男性器を模した形が主流で、お客さまも「プレジャーグッズとは、挿入するもの」というイメージが強かったようですが、ここにある商品は外からアプローチするものが多くて、「外から刺激していいんだ」「こういうものがあると知らなかった」と新しい発見をされるようですね。

フェルマータの中でも人気No.1の「Dame Products」の「Kip(キップ)」という商品。挿入型ではない新しいバイブレーターなのが新鮮です。

─プロダクトを通して、自分の身体にどうアプローチしたいのか、自分の身体は何を求めているのかを知るーーbdaオーガニックセクシュアルウェルネス塾では、プレジャーグッズとはコミュニケーションツールだと考えていますが、そこには“自分の身体とのコミュニケーション”も含まれるということがよくわかります。

中村:商品をセレクトするとき、fermataではその会社のCEOやファウンダーと親しくなるようにしています。そうして価値観や目指す世界観を共有することを重視しているからです。
そのうえでfermataのメンバーでグッズをトライアルで使用し、日本のニーズに合うと思うものをセレクトしています。どういう人たちが、どんな想いで開発したかという背景も大事ですね。世界のフェムテック市場では、ストーリーのあるグッズがとても多いんです。それをお客さまに伝えながら、グッズを届けたいと思っています。

─動画では、米ニューヨーク発のDame Products(デイム・プロダクツ)をグッズをいくつか紹介しています。同ブランドのストーリーとは?

中村:MITを卒業したエンジニアと、コロンビア大学卒のセクソロジスト(性科学者)、ふたりの女性で起ち上げた会社ですが、既存のマーケットが男性視点であることへの問題意識から、そうではなく本当に女性が求めるものを作ろうという理念とともにスタートしたブランドです。
これまでプレジャーグッズに関してのユニークな活動をしてきましたが、なかでもインパクトがあったのが地下鉄にプレジャーグッズの広告を出す、ということです。けれど、広告審査で「掲載NG」と判断されてしまい……。

─これが仮に日本なら、電車内にプレジャーグッズの広告が掲出されていたら、たしかに大騒ぎとなるでしょう。

中村:それが彼女たちは、NGを出されたことに抗議したんですよ。男性向けにバイアグラの広告を出している会社はOKで、女性のプレジャーについてはNGというのはおかしいのではないか、と胸を張って訴えました。女性のプレジャーは卑猥でいやらしいものではなく、セクシュアルウェルネスにおいて大事なものなんだと異論を唱えたのは、それ自体が画期的なアクションだといえます。

─動画では同ブランドの「Eva2」「Kip」「Pom」「Fin」の4商品をご紹介いただきました。

「Dame Products」のアイテム。ポップな色合いと形で、プレジャーグッズには見えないです。詳しく知りたい方は動画もチェックしてみてください。

─こうした商品はfermataのオンラインショップでも販売されていますが、今夏から「New Stand Tokyo」という実店舗での販売もはじめたことに、中村さんは大きな手応えを感じているようです。

中村:フェムテック商品はベールに包まれているイメージがいまだ強いですが、近い将来、当たり前の選択肢として身近にあってほしいという思いから実店舗の販売を決めました。オンラインショップでもサイズや素材の質感などをわかりやすくお伝えしてはいますが、やはり決めるのがむずかしい……と感じられる方もいらっしゃいます。
店舗で手に取り、触って、比べて、納得して購入いただける様子を目の当たりにすると、私たちもうれしくなりますね。
店頭では、fermataのメンバーが毎日立っています。みなさんの悩みや困りごとをシェアしながら、「こうした悩みには、このプロダクトがいいと思いますよ」と私たちの実体験に基づきながらご提案しています。

─実際に使った人の話は、商品を決めるうえでとても参考になりそうです。

〜編集後記〜

fermataの中村寛子さんが紹介してくれたプレジャーグッズの数々を見て、かつて観たピンク映画のあるシーンを思い出しました。

性行為を強要してくる夫にキレて家を出た女性が、ほかの男性と出会って自分が愉しむためのセックスをしようとします。しかしその男性は自身の性器のサイズを自慢してきました。そこで女性は、「女性だって、ひとりでイケるのよ」といいます。

これは、カップルで得られる快感を否定する台詞ではありません。女性の快感は「男性ありき」ではなく女性自身で獲得できるもの、ということを意味していて、とても痛快なひと言です。

女性のプレジャーグッズを、女性が作るーーこんなに当たり前のことが長らく“常識”ではありませんでした。世界には十年以上前から女性の身体構造や肌感覚にそったグッズを開発するメーカーはあり、特にここ数年で急増しています。国内でも追いつけ追い越せという動きが見えますが、フェムテック市場の活況はそれをさらに後押しするでしょう。

ぜひ「New Stand Tokyo」に足を伸ばしてみてください。女性が主体的に快感を求めることが当たり前の世界が、そこに広がっています。

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