産婦人科医に聞く、今さら聞けない大人の性教育──宋美玄 先生

産婦人科医に聞く、今さら聞けない大人の性教育──宋美玄 先生

大人の女性のセクシュアルヘルスを真面目に考える「セクシュアルヘルス塾」。

今回は「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」の著作やコメンテーターとしても活躍されている、産婦人科医の宋美玄(そん みひょん)先生に「女性が感じる性欲とセックスの仕組み」についてお聞きしました。

気持ちいいセックスに欠かせない3つのステップ

「セックスを気持ちいいと感じるには、男性も女性も、きちんとしたステップを踏むことが大切です」そう話すのは、10年以上、性について研究をしてきた宋先生。「セックスのメカニズムは簡単に言えば、脳が興奮して骨盤が充血し、オーガズムでビクビクして戻るというもの。この反応をきちんと作り出すことで、セックスが気持ちよくなるのです」。

まずは、セックスのときに身体に起きる3つの反応についてお聞きしました。

「第1期 興奮期」
まず最初に起きるのが「興奮期」の反応。脳が刺激を受けて興奮すると、陰部が「濡れる」という反応が訪れるとのこと。「濡れる」とは、膣の粘膜の壁から血液からしみでて透明な液が出てくることを言います。また、通常は皮の中に包まれているクリトリスが、むき出しになって出てくることもあるそうです。

「第2期 平坦期」
つづいて起きるのが「平坦期」の反応。これは膣がペニスを受け入れやすい状態になる反応とのこと。膣の奥が広がり、子宮が上に上がったり、一瞬クリトリスが引っ込んだりするそうです。また、膣の入口部分はふわっと開き、ペニスが挿入されても痛くない状況が作られます。

「第3期 オルガズム期」
ペニスが挿入されるなどの刺激を受けることで、第3期「オルガズム期」の反応が置きるそうです。オルガズムとは、交感神経の反射が置きていて筋緊張で骨盤底筋がリズミカルに動くものなのです。このとき、同じリズムでビクビクビクっと骨盤底筋が収縮します。男性も射精のときには、ぴゅぴゅぴゅっとリズムがありますが、これも同じ骨盤底筋群が痙攣をしているものなのだとか。このときに、脳の下垂体から愛情ホルモンと言われるオキシトシンが出て、子宮が収縮します。

 

自分の感じるポイント ちゃんと知ってる?

「女性の性反応は多様なんです」と宋先生。「大きく3つの反応ポイントがあります。クリトリス、Gスポット、子宮膣ポルチオ、のことです。この3つはそれぞれ支配神経が違っているんです」。

まずクリトリスは、陰部神経というものにつながっています。陰部神経は下半身につながっているため、クリトリスだけでオーガズムに達すると、下半身にだけ痺れが広がるそうです。一方でGスポットはやポルチオは、その範囲が広く、とくにポルチオは迷走神経という脳神経のひとつなので、脳にダイレクトに響くようなオルガズムを感じると言われているそうです。ポルチオとは、膣の奥、子宮口にあるポイントです。

「とはいえそれぞれの感じ方は人それぞれ。クリトリスは大抵の女性がオルガズムに達する素質をもっていると言われていますが、Gスポットは1〜3割くらい、ポルチオに至っては1割もいないと言われています。自分はどこが感じるポイントなのかを把握し、それにあったセックスをしなければ、オルガズムを感じにくくなってしまうんですよ」

いままでセックスで気持ちがいいと感じたことのなかった人や、むしろ苦手だと感じていた方も、まずはセルフプレジャーで自分の体と対話をして、気持ちのいいポイントを知ってみると良さそうですね。

人間は他の生き物と違い「脳」でセックスしている

「動物は子供を作るためにセックスをしますが、人間だけは愛情の確認のためにセックスをします」。そう話すのは宋先生。動物は性ホルモンが分泌される発情期にだけセックスをしますが、逆にそれ以外ではセックスを行わない。しかし人間は他の動物と脳の構造が違い、大脳皮質に支配されているので、発情期ではなくてもスイッチが入ればセックスがしたくなるのです。

「性欲を高める性ホルモンはテストステロン。一般的に男性のほうがテストステロンを多く持っていますが、女性も卵巣などからテストステロンが分泌されているんですよ」

ほかにもセックスに関する性ホルモンがいくつかあるのだとか。それぞれの特徴を見ていきましょう。

感度を上げる、性欲を抑制する…さまざまなホルモンの働き

「女性が多くもつホルモンのひとつに、エストロゲンがあります。これはテストステロンのように性欲を湧き起こすものではありませんが、『感度』に重要な役割を果たしています」

エストロゲンは膣に流れる血流や血管を増やします。この血管や血液が、普段の潤いや、セックスのときの濡れる状態に影響します。エストロゲンが減ると、膣が濡れにくくなったり、ヒリヒリと痒くなったりします。

性欲を抑制する性ホルモンもあるとか。「排卵のあとに出てくるプロゲステロンというホルモンは、性欲を抑制する働きがあります。排卵の後にあまりセックスをしたくなる人が多くなるのは、プロゲステロンの作用によるものです。また、授乳中に出るプロラクチンという成分は性ホルモンではありませんが、性欲を抑制する作用があります」。

体のサインにしたがってセックスを楽しもう

このように、特に女性の性欲や感度は、性ホルモンに影響を受けているのです。あまり気が乗らないときに無理してセックスをしようとしたりせず、また濡れにくいという場合は安心・安全なジェリーローションを活用するなど、自分の体のコンディションに合わせることで、セックスをもっとポジティブに考えられるのではないでしょうか。

セックスが気持ちよくないのは「あなた」に原因があるかも

「相談に来られる方に多いのが、『セックスもマスターベーションもあまりしたことがない』という方。スポーツと同じで、セックスもあまり経験がないと上手に気持ちよくはなれません」と宋先生。ではセックスをたくさんしたほうがいい?

「要は、自分の性欲のスイッチや体の特徴を良く知ることが大切。そのためにはアダルトサイトや書籍を見たり、大人のおもちゃを使ってみることをおすすめします」

セルフプレジャーでいろいろなことを試してみて、自分がどんなシーンに興奮するのか、あるいはセックストイを使って体を刺激してみて、自分の心地よいポイントがわかってくると、セックスの際にもスムーズに快感を得られるようになるということです。

自分でイッてみればオルガズムがわかる 

「自分でイッたこともないのに、いきなりセックスでイキたいというのは、起業すらしていないのに上場したいと言っているのといっしょ。まずは自分でイッてみてください」と宋先生。セックスでイケないのは相手のせいだと思ったら、それは違うと言います。「特に、イカなきゃと思っていたり、セックスに没頭できず雑念がよぎったりすると、余計にイキにくくなるんですよ」

まずは自分でセルフプレジャーをいろいろと試してみて、好きな”おかず”やアイテムでイッてみると、セックスの気持ちよさもわかるし、いざ本番でもリラックスしてセックスに集中できるようになるそうです。

膣もセックスに向けたトレーニングが必要

体の準備も気持ちいいセックスには大切だと宋先生は言います。「そもそもセックスをしたことがない膣は、綿棒も入るかどうかというくらいに細いものです。そこにいきなり男性のペニスを入れようとしたら、痛いに決まっているんです」。

そこで、膣にものが入るということに体を慣らしておくことが必要とのこと。「自分の指、膣ダイレーター、バイブなどを使って、自分の膣にものが入ることに慣れていくことをおすすめします。まずは一番細いものをいれて10分くらい過ごしてみて、徐々に太さを変えていく。そのとき、ただ広げるだけじゃなくて、アダルトサイトなどを見ながら、同時に興奮スイッチを入れるトレーニングをおすすめします」

なかには、膣痙攣など、機能障害の場合があったり、使用する道具やジェリーローションなどの使い方など、まずは専門医に相談して適切な指導を受けるのがおすすめです。

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