大人の女性のセクシュアルヘルスを真面目に考える「セクシュアルヘルス塾」。
今回は性に関する総合アドバイザーであり、メディアや研修など多方面で活躍する、ラブライフアドバイザーのOliviA(オリビア)さんに、多く寄せられるセックスの悩みの特徴について聞きました。
性生活を充実させたいけれど、どうしたらいいのだろう。そんな悩みに答えているのが、ラブライフアドバイザーのOliviAさん。OliviAさんに寄せられる悩みは、実に様々だと言います。
「多くの方が性生活を充実させたいと思っているのですが、性の話は、家族はおろか友人にもなかなか相談しにくいもの。とくに最近は年齢・性別問わずご相談を受けるケースが多いです」
その中でも多いのがセックスレスの悩みだとか。「以前は中高年向けの雑誌などで多く取り上げられていたテーマで、性欲や精力に関しての内容が取り沙汰されるケースが多かったですが、最近では若い方からの相談も増えています。たとえばこれから結婚しようというカップルが、実はセックスがなくて悩んでいるというケースがありました」。
セックスレスに限らず性の悩みには、肉体的な理由だけでなくさまざまな背景があるというOliviAさん。その原因の根本を知り、対策することが大切なようです。
「男性と女性では、性の悩みのベクトルが違うケースが多いです」と、OliviAさんは言います。どんな違いがあるのでしょうか?
「女性の場合は、相手との関係性に悩みのポイントがあることが多いです。たとえば、オーガズムを感じたことがないという女性からご相談のケース。オーガズムを感じたことがないというお悩みですから、当然『どうしたらオーガズムを感じることができるか』というテクニックに関するアドバイスをしようと考えがちです。しかしよくお聞きすると、この方は『今までの彼女はイってたのに、どうして君はイケないの』と言われたことで悩んでいるというのです。つまり、相手との関係を壊したくないという気持ちが、悩みの背景にあったんです」
このように、女性の場合は純粋な性的欲求に関する悩みだけでなく「相手に嫌われたくない」あるいは「相手ともっと関係性を良くしたい」、というパートナーとの関係性を重視した相談が多いそう。
一方で男性からの悩みはパフォーマンスに関するものが多いようです。
「たとえば、性交時の膣の刺激でイケない、とか、すぐイッてしまうけれどどうしたらいいか、といったお悩みが多いです。自分の男性機能の低下に不安を抱いたり、女性を満足させられるようなセックスができないことを恥ずかしいと思っていたりと、不満足なパフォーマンスから自分の力不足を感じて悩んでしまっているケースがよく見られます」
性生活に関する相談が多く寄せられる、ラブライフアドバイザーのOliviAさん。特に多いのがセックスレスに関する相談だといいます。ではその原因はなんなのでしょうか。
「前回お話したとおり、セックスレスについての悩みは低年齢化しています。つまり、肉体的な要因だけでなく、心理的な要因が大きいのです」。その要因のひとつが、古くからのセックスに関する価値観ではないかと指摘します。
「セックスは男性が女性に欲情して、男性がリードするもの。という価値観が未だに強いことが、セックスを遠ざけている要因になっているように感じます。たとえば女性からセックスの話を聞いていると、たびたび『彼を虜にする』という表現が出てきます。これは彼に性的な存在として認められてこそ、女性としてのアイデンティティが満たされるという刷り込みが未だに強いことを意味していると思います。このような考え方では、たとえばセックスレスになったときに、女性が自分から誘いにくくなってしまいますよね」
自分からセックスを誘うのが恥ずかしいという気持ちになり、さらには誘われないと自分にはもう魅力を感じないのではないかと悩んでしまう。なんとなく思い当たる節がある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
セックスレスを打開するには、心、身体、技それぞれに着目することが重要だとOliviAさんは話します。
「まず<心>の面では、女性自身が性をタブー視せず人生において大切な要素だと認識することが大切だと思います。性について口に出したり考えたりすることを、恥ずかしい、はしたないものと思わないこと。その上で自分のして欲しいこと、して欲しくないことをきちんとパートナーに伝えられるようになること。それだけでずいぶん変わるはずです」
たとえばパートナーとのセックスで性交痛がある場合、無理して我慢していると本来なら気持ちがいいはずのセックスが、辛い時間になってしまいます。そんなときに、ジェリーローションを使いたいと伝えることや、自分の好みのアイテムを提案できれば、心理的な負担も軽くなります。
「とはいえ、どうパートナーに伝えたらいいかわからない、という方も多いはず。そんなときは気軽に相談いただけたら」。
「気持ちいいセックスをするには、体位やテクニックといった<技>も大切な要素です。」セックスのテクニックというと、あまりいいイメージを持たない方も多いかもしれませんが、なにも特別な技を身につけるというのではなく、あくまで二人が気持ちよくなるためのコツを身につけましょう、ということ。「気持ちよくなるためにどうすればよいかがわかっているだけで、自信もついてリラックスできるはずですよ」
<体>については、自分自身が快感を感じるトレーニングをしておくことが大切だとOliviAさん。「オーガズムがわからないという女性に話を聞くと、セルフプレジャー(マスターベーション)をしたことがないという方も結構いらっしゃいます。オーガズムはパートナーが与えてくれるもの、と思っている方が多いのですが、自分でオーガズムを感じたことがないと、なかなか難しいんです。しっかりと自分の体と向き合って練習しておくことが、オーガズムを得る近道なんですよ」
お話をきいてみると、セックスや自分の体について向き合うことをせず、相手が気持ちよくしてくれるという幻想を抱いたり、自分はセックスには向いていないと思い込んでしまっているケースは多いように感じます。
「そうなんです。まずは自分の体やセクシュアリティと向き合うことからはじめてみてはいかがでしょうか」
具体的にはどのように自分の体や快感と向き合っていけばいいのでしょうか?
「気持ちいいセックスのための第一歩としておすすめしたいのが、”セルフプレジャー”を楽しむことです」
マスターベーションというと一人でセックスの代わりに快感を得る行為というイメージですが、セルフプレジャーのイメージはもっとリラックスしたものだそう。
「まずはバスルームで外陰部を丁寧に洗ってみることをおすすめします。いきなり自分の外陰部を触るのには抵抗があるという方は、ショーツの上からなぞってみるところから始めてみましょう。
次に、バスルームで鏡を使って自己観察してみてください。ほとんどの方は、自分で自分の外陰部をじっくり見たことがないのでは? 目をそむけず自分で観察しながら触ることで、心理的な抵抗感をなくしていきます」
自分の性的な部分に対する抵抗感をなくしていくことが、肉体的な満足を受け入れるトレーニングになるそう。こうして徐々に気持ちいいポイントを刺激していくことで、ただの性欲処理ではなく、楽しく気持ちよい時間を作ることがセルフプレジャーのポイントとのことです。
オーガズムというと、ただイクという感覚だと思いがちですが、オーガズムの相談を受けているといくつかの種類に分類されているとOliviAさんは指摘します。
「”外イキ”と”中イキ”といわれるものがあります。”外イキ”は、クリトリスなど外陰部でオーガズムを感じること。”中イキ”は膣の中の部分でオーガズムを感じることを言います。
たとえば、セルフプレジャーでオーガズムを感じるけれど、セックスではオーガズムを感じないという場合、相手との相性ということではなく、外イキはできるけれど、中イキができないという、イキ場所の違いを悩んでいることもあるんですよ」
オーガズムが得られないからといって、自分自身を責めたり、自信を失ったり、相手を傷つけないようにそれを隠したりする方も多いそうですが、もっと客観的に分析したうえで、解決法を見つける姿勢が大切だとOliviAさんは言います。
気持ちの良いセックスをしていくには、受け身ではなく、自分自身の心構えや準備が大切だとOliviAさん。
「セックスの場面で”以心伝心”はむずかしい、と日頃からアドバイスしています。特に男性と女性では身体の構造も違いますから、相手にわかってほしい、気持ちよくして欲しいと期待するだけではうまくいくはずがありません。だからこそ、きちんと希望を伝えあえるようにコミュニケーションを取ったり、相手をうまく誘導していくことが大切。それをするにも自分自身の身体や、心地よくなるポイントを知っていないと、なにをどう伝えればいいのかもわからないはずです。自分と向き合い、相手と上手なコミュニケーションを取ることが、円満なラブライフの鍵となりますよ」