完璧主義をやめよう!医師がおしえる「セックスレス」解消法とは?

完璧主義をやめよう!医師がおしえる「セックスレス」解消法とは?

「女性のためのセクシュアルウェルネス」をテーマに、さまざまな「性の専門家」をお招きし、性をもっと正しく、楽しく学べる場所を目指すYouTubeチャンネル「bda オーガニック|セクシュアルウェルネス塾」

今回のゲストは、産婦人科医でセックスセラピストの早乙女智子さん。前半では、セックスレスになる代表的なきっかけを教えてもらいました。きっかけはきっかけでしかなく、そこにあるコミュニケーションレス、ひいてはパートナーシップに問題があったり、自分に自信がないことが原因なのだとわかりました。

後半では、その解消法についてうかがいます。

YouTube動画はこちらから。(下に記事が続きます)

聞き手&text=三浦ゆえ(ライター)

早乙女:触れ合えるけどセックスだけできていないカップルと、触れ合うことすら無理というカップルがいて、前者はちょっとしたきっかけで「急にできるようになりました!」ということもよくありますが、後者はとても厳しいです。

であれば、完全なセックスレスになる前に防ぎたいところ。それにはどうすれば?

早乙女:キーワードは案外、セックス以外のところに潜んでいるものです。生活のなかでのすれ違いや、コミュニケーション不足。それが家事の分担に表れていることも多いですね。ゴミは出してくれる。でも、そのゴミをまとめているのは誰でしょう?

ゴミを出す曜日を管理し、家のどこにゴミ箱があるかを把握し、分別に応じてまとめ、そのあとでゴミ袋もきちんと補充しておく。ゴミ袋のストックも管理する……ひとつの家事の周りには、こうした”名前のない家事”が潜んでいます。名前のある家事だけをして「やっているぞ」と言われると、名前のない家事を担う側は納得がいかないも当然です。

早乙女:家事分担は、必ずしも分量が同じでなくてもよくて、公平「感」さえあればいいと思います。

決定的な理由があってセックスレスになったわけではなく、なんとなくレスになった、気づけばレスになったという人は、日常生活を見直してみると「その気にならない」理由が見えてくるかもしれません。ただセックスがしたくないというだけでなく、本当の不満はどこにあるかを探り、そこをほぐしていくことで、コミュニケーションレスにもセックスレスにも光明が見えてくるというわけです。

早乙女:だからセックスレスにならないようにするためには、日ごろから我慢しない、言わないで済ませない、やってほしいことはちゃんとやってもらうことです。
特に女性は相手に遠慮しちゃうんですよね、こんなこと言ったら悪いかな、せっかく夫が求めてくれているのに断ったら愛情がないと思われるかな……そうして長年不満を溜め込みつづけて、更年期でバーンッ!となる。そうならないためにもちょっとずつ小噴火していったほうがいいんです。

セックスをどうとらえているかも見直したほうがいいと、早乙女さんはつづけます。

早乙女:完ぺき主義の人が増えたのかな、と思うことがあります。ご飯はフルコースじゃないとダメ、みたいな考えの人。

セックスで言うなら、キス→前戯→挿入→いくつかの体位→射精というのがフルコース。これ自体が男性中心的なとらえ方ですが、「一連の行為ができないのであれば、セックス自体をすべきでない」と思い込んでいる男性は少なくないといいます。

早乙女:途中でやめるのが怖いから、最初からしないことを選ぶようですね。でも食事なら「今日はおにぎり1個でゴメン!」と、間に合わせで済ます日もありますよね。セックスも同じく、「今日は5分だけ!」と決めてパパッと済ます日があってもいいのでは? もっと言うと、イカない日があってもよし。

セックスをしない理由を尋ねるアンケート調査などでは、決まって「疲れている」「時間がない」「面倒くさい」といった項目が上位に入ります。

早乙女:セックスに割く時間があるなら、眠りたいという人もいますし、娯楽が多い現代ですからゲームをしていたいという人もいると思います。
でも、疲れていて眠かったとしても、良質な睡眠を取るのにセックスも大事な要素だから、ちょっとだけ睡眠時間を削ってセックスするのもありですよね。
時間が本当にないなら、朝の「いってらっしゃい」のときハグをしてみる。セックスはできなくても、眠るときに手をつないでみる。産後や更年期の女性にはそれすらイヤということもありますが、できる範囲で接触のチャンスを残しておくことが大事だと思いますね。

そのためにも必要なのが、日々のちょっとした「ゆとり」を見つける姿勢なのだと言います。そこからセックスにつながるいろんなものが見えてくるのだとか。

早乙女:ちょっとだけ自分に時間と心を使うのが、豊かさにつながりますよね。私は日常的に着物を着るようになって、そのことに気づきました。
着物って手間がかかるし、決まりごとが多いんです。でもその手間が楽しいし、決まりごとのなかで遊ぶのが面白い。これってセックスにもつながると思いませんか? 相手を尊重し、お互いに同意を確認するという大枠のルールはあるけれど、あとは限りなく自由です。

早乙女さんのセックスレスのお話には、テクニックや会話術といったものは出てきません。セックスについて考えるうえで大事なのはそこでなく、生活を考え、人生を考えることなのだと教えてくれます。

早乙女:人生って、プロセスですよね。生まれました、いつか死にます、というだけでなく、そのあいだを私たちは生きている。
楽しいことも苦しいこともあって、それ自体が価値あるものです。そう考えるとセックスレスをパートナーと共に乗り越えていくことも、とても楽しいプロセスになるかもしれない。
いまの日本社会は平和で、みなさん、今日と同じ明日がくるとなんとなく思っていますよね。私もそうだったのですが、友人を亡くしたとき「会いに行くね」といったのに行けずじまいだったことを思い出し、同じ明日が来るわけではないと思い知りました。パートナーだって朝、いってきますと家を出たあと、もう二度と顔を見れなくなる可能性もないわけではない。
そう考えると、ケンカしたままではなく、無理してでも笑顔で送り出すとか、手をポンッと合わせるとか、ハグをするとか、そうしたことをおろそかにしなくなるのではないかと思います。

結果、ふたりのパートナーシップに変化がもたらされ、セックスレス状態にも影響していく。遠回りのように見えて、実はいちばんの近道なのでしょう。

早乙女:パートナーシップって、永続するかもしれないし、そのつもりでいても離れるときがくるかもしれないのものですよね。セックスレスの不安は、先が見えないところにあります。ふたりが平行線の状態で、この先も離れていく気はしないけど、交わる気もしない。
もし交わるのだとしても、それがいつになるかはわからない。だったら、そんな先のことを考えるよりも、「今」できることをちょっとずつ重ねていきませんか。ハグは1秒でもできますよ!

~編集後記~

私は、女性に性生活についてお話してもらう取材活動をしていますが、女性側のセックスレスになった理由として「もとからセックスが好きではなかった」というのが少なくないと感じます。
ではそうした人たちがパートナーとセックスレスになって以後は二度とセックスをしないかというと、決してそんなことはなく、そのパートナーとの関係を解消して新たな人と出会い、そこではじめて気持ちよくなれたというのが、ひとつの典型です。

取材に応じてくれるのはたいていが、「いまは」セックスを愉しんでいる女性たちなので、誰もが同様のプロセスをたどれるとはかぎりません。
しかしよくよく聞くと、「そのときのセックスが自分と合わない」「相手との関係性に不満があって、その気になれなかった」のであって、「セックスが嫌い」ではなかったのだとわかることも、多いのです。

たらればの話でしかありませんが、セックスが好きではないと思った時点で、何がイヤなのか、本当はセックス以外のところに不満があるのではないかということを掘り下げられたら、自分はどういうプレジャーを求めているのかをはっきり知ることができていたら、そしてふたりでプレジャーを深める関係に変わっていけたら……その人はパートナーと別れることなく、人生そのものもまったく違ったものになっていたかもしれない。そう思わされることがしばしばあります。

セックスで、人生は変わる。逆にいうと、生活や生き方を見直すことで、セックスも変わりうる。早乙女さんの言葉に、うなずくばかりの回でした。

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