デリケートゾーンケアという語をよく耳にするようになったのは、ここ2、3年のことでしょう。これは、それまではケアをしなくてもよかった、ということではありません。ではなぜ今、にわかにケア用品が発売されたり、メディアで特集が組まれたりしているのでしょうか。
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今回は、ラブライフアドバイザーのオリビアさんをお迎えし、デリケートゾーンケアの方法、アイテムの選び方などをうかがいます。
*こちらの記事は前編・後編に分かれています。後編はこちら >>
YouTube動画(下に記事が続きます)
構成&text=三浦ゆえ(ライター)
オリビア:身体のなかでもマイナートラブルを抱えている方が多いのが、デリケートゾーンといわれる場所です。具体的には蒸れ、かゆみ、あとは肌荒れによる乾燥などを指しています。多くの女性が、何がひとつはトラブルを抱えているといってもいいでしょう。
これはライフステージによって変わってくるものでもあります。たとえばおりものが分泌されてくる初潮前、そして産後、さらには年齢を経て更年期、老齢期に至るまで、それぞれの年代ごとの悩みがあります。
それを解消するためにはセルフケアが必要、ということです。
日ごろは特にトラブルがなくても、月経中は不快感が増すという人もいます。
オリビア:月経用ナプキンや、おりものシートで蒸れてかぶれる方も、とても多いですね。
しかし、下着のなかが蒸れたりかゆくなったりという不快感を、身近な家族や友人であっても気軽に話してこなかった人が大半だと思います。これまでケアの必要性が知られてこなかったのは、つまりトラブルがあることを女性同士でも共有されてこなかったからに、ほかなりません。
また、解消の手立てを知らないと人は「仕方ない」とその不快な状況を受け入れ、我慢します。そうした理由からデリケートゾーンの不快感は長らく表に出てこなかったのです。
オリビア:ほかにもセックスの前後にデリケートゾーンが気になるという方もいますね。たとえば自分がにおってるのではないかと悩んで、セックスに積極的になれない。さらにはセックスが終わったあとの分泌液や潤滑剤の残りをどうしたらいいのかわからない、ということもあると思います。
本当ににおってるかどうかはともかく、それによって自分に自信がなくなっていくのであれば、それは対処すべきトラブルということです。
オリビア:ファーストステップは、「洗う」で、その次のステップとして「保湿する」があります。身体のほかのパーツと同じように、スキンケアをする感覚ですね。一度お手入れをしはじめたら、あと戻りできなくなるという方もいらっしゃいますよ。
さて、これまでデリケートゾーンを洗うときに「何」を使ってきたでしょうか。
オリビア:お湯でデリケートゾーンの表面だけを流すのでは、タンパク質の汚れは落ちません。シャワーヘッドを近づけて水圧で洗い流すというお話も聞きますが、これは腟内までお湯が入ってしまうので、かえって逆効果。トラブルの原因になっている可能性があります。
また、ボディソープで洗うと染みたり、あとで乾燥しすぎてしまうことが多いです。これは洗いすぎて肌や粘膜に必要なものまで流してしまう、あるいは粘膜のpH(酸性なのか、アルカリ性なのかを表す尺度)が崩れることで起きています。
そこでおすすめしたいのが、デリケートゾーン専用ソープです。
オリビア:専用ソープというのは、粘膜に合わせてpHが調整されていたり、低刺激で肌への負担が小さかったりといったメリットがあります。
普段は大丈夫でも月経が近かったりするとヒリヒリ感じたり、周期によって変わることもあるでしょう。
オリビア:女性の肌には揺らぎがあるので、粘膜に合わせたものを使うというのが大事です。
次に知ってほしいのが、洗い方です。
オリビア:女性のデリケートゾーンは構造がとても複雑です。さらにはアンダーヘアもあるので、体内から分泌されたおりものや尿、便などがそこに付着して、それが不快感やにおいの原因になります。構造をよく知って、ていねいに洗いましょう。
正しく清潔に洗うためには、まずは外陰部の構造を知ることから、とオリビアさん。
オリビア:太ももの内側、ふっくらしている部分は大陰唇で、かなり汗をかきやすいところでもあります。また、この部分にもアンダーヘアが生えている方は多いですが、先ほどお話したとおりアンダーヘアは汚れが溜まりやすいところです。
大陰唇の内側には小陰唇のひだがあり、さらにそのなかに尿道口、腟口、クリトリスがあります。大陰唇と小陰唇のあいだに溝があって、人によって深かったり浅かったりするものですが、ここに“恥垢”といわれる、おりものや分泌液が合わさって垢のようになったものが溜まりやすくなっています。溝に指を入れて、ていねいに洗ってください。
見落としがちなのが、クリトリスです。クリトリスの先端は通常時、包皮といわれる皮のなかに隠れています。この包皮とクリトリスのあいだに汚れ、恥垢が溜まることもあるので、包皮を軽く剥いて、ていねいに指を使って洗いましょう。
ほかには会陰部、肛門のうしろ側も汚れが気になるところです。月経中、経血がお尻の割れ目のほうにまで流れ、そのままこびりついてるような状態になることはめずらしくありません。
構造を知るといっても、自分の外陰部を見たことがないという人は少なくないでしょう。そこでオリビアさんは、ケアをはじめるのを自分の外陰部、デリケートゾーンを見て、知るきっかけにしてほしいと言います。
そしてその名のとおり、デリケートゾーンはとても繊細な場所なので、洗い方にも注意が必要です。
オリビア:タオルやスポンジなど使わずに、自分の指で確認しながら洗うもの、と覚えてください。流すときに熱いお湯を使うと、逆に乾燥してしまうおそれがあります。体や髪を流すのよりもさらにぬるめのお湯で、やさしく流しましょう。
ピュビケア オーガニック フェミニン シフォン ソープ
オリビア:ボトルからフォーム状で出てくるので、泡立てる必要がなく、使用がとてもラクチンです。ラクというのはとても大事で、特別なことをしなきゃと思うと負担になります。日々のお風呂の時間に取り入れやすいのが、フォームタイプの特徴ですね。
香りが3種類あり、自分の好みの香りを選べるというのも、お手入れするモチベーションにつながると思います。
動画では、ビターオレンジ&レモンの香りを試しました。
オリビア:ポンプを押すときめ細かい泡が出てきます。肌をあまりこすり過ぎると乾燥の原因になるので、肌と手で泡を挟むようなイメージでやさしく洗うと、肌への負担が少なくていいですね。基本的な洗い方は、お顔と同じだと思ってください。
YES インティメイト・フォームウォッシュ
オリビア:こちらも同じくフォームタイプの専用ソープです。「YES」はイギリスでは、デリケートゾーンのケア用品としてクリニックでも勧められることがあるブランド。潤滑剤も販売しています。原料がオーガニックなので、安心して人にも勧められるのが魅力です。
コスパがよく、1回の洗浄で使うのはだいたい2プッシュ、それで半年ぐらいは持つといわれていますね。
しっかり洗い落とそうと思うと、つい使う量が多くなりがちですが、商品ごとに適切な量を使うのが肝要です。
オリビア:「ローズ」と「無香料」の2タイプが用意されています。私のもとには、お子さんと一緒に使いたいのでお勧めはないですか? という相談も届くのですが、そんなときはこのYESの無香料をお知らせすることが多いですね。香料が入ってないぶん、お肌への刺激も少なく、肌質を問わず使えるので、親子で使うときはこちらがいいだろうと思っています。
香りの好みは、人によって違います。無香料という選択肢があれば家族全員で使いやすいということです。
サマーズイブ フェミニンウォッシュ マルチベネフィット デイリーバランス
オリビア:こちらはいままでのフォームと違って、ジェル状のソープです。ドラッグストアでも販売されている、お求めやすい商品です。ぬるま湯で濡らしたデリケートゾーンにこのジェルを塗布して、やさしく指で洗って、洗い流します。肌の負担も少ないです。
オリビア:初潮前になるとおりものの分泌が始まるので、お子さんでもデリケートゾーンの蒸れやにおいが気になることがあります。そんなときは、親御さんから「こうした専用ソープを使って手で洗うといいんだよ」と教えながら、洗い方を共有していくのがいいと思います。
また、お子さんだけでなく、祖母世代も更年期以降は乾燥が気になる、尿漏れでにおいが気になるといった悩みが出やすいので、ぜひ専用ソープを使ってほしいと思います。3世代にわたって共有できるものですね
昨今は、メディアなどをとおしてアンダーヘアの脱毛を勧められることが増えています。
オリビア:先述したとおり、アンダーヘアにはにおいや不快感のもととなる汚れが付着しやすいので、これをなくすことによって悩みが解消される可能性はあります。ですが、完全に脱毛するかどうかは人それぞれの選択です。
毛の長さを少し短くカットするだけでも通気性がよくなり、快適度も上がるので、いま困ってる方は試してみてはいかがでしょうか。
デリケートゾーン専用ソープそのものは、以前から市場にありました。しかし数年前まで「固形がよい」とされていました。ボトルに入ったタイプだと、パッケージに「デリケートゾーン専用」であることが示されるため、特にご家族と同居されている場合は、使いにくいだろうという“気遣い”に基づいての考えでした。
そこにはやはり、性器周辺のことを気にするのは恥ずかしい、というタブー意識があったと思われます。
こうして振り返ると、デリケートゾーンを取り巻く環境はずいぶん短期間のあいだに変わったものだと思います。
いまや専用ソープを使うことが”常識”となりつつあります。ソープの選択肢も増えました。
これまで気にしないようにしていた不快感を、もう我慢しない。女性たちの、そんな気持ちが表れた結果だと思います。