自身のケアは、自身のために。フェイスケアもボディケアも、美容目的で日々実施されている方が多いと思いますが、自分自身が快適に過ごせるかどうかも大きな要素です。乾燥してかゆみが出れば、保湿する。そんなちょっとしたケアすら、長らく「なくていい」とされていたのがデリケートゾーンです。
それは不快感がないという意味ではなく、表立って語られることがなかっただけ。そうして悩みが共有されないと、解消する手立ても提示されません。結果、多くの人が「こんな悩みは自分だけ」と思い、我慢してきたのです。
「女性のためのセクシュアルウェルネス」をテーマに、さまざまな「性の専門家」をお招きし、性をもっと正しく、楽しく学べる場所を目指すYouTubeチャンネル「bda オーガニック|セクシュアルウェルネス塾」。
ラブライフアドバイザーのオリビアさんをお迎えした前篇では、「洗う」について詳しくお話をうかがいました。後半も引きつづきオリビアさんに「保湿」について解説いただきます。
*こちらの記事は前編・後編に分かれています。前編はこちら >>
YouTube動画(下に記事が続きます)
構成&text=三浦ゆえ(ライター)
オリビア:下着が常に当たっている、または、お手洗いでトイレットペーパーで拭くなど、デリケートゾーンは摩擦による刺激を絶えず受けており、とても過酷な状況にあります。それによってヒリヒリし、その状態がずっとつづいてしまう方は少なくありません。
デリケートゾーンは、加えて、性行為のときに愛撫や挿入による摩擦を受けることもあり、終わったあともヒリヒリと残る人は少なくありません。これは、「外陰部の性交痛」といわれる状態につながります。
保湿ケアをすれば、性交中のヒリヒリや痛みを防げる可能性があります。
ここからは、具体的にどのようにして保湿をするのかを教えてもらいます。
オリビア:前篇で解説した「洗う」のステップが終わったあとに、今度は保湿剤をつけていきます。「洗う」と「保湿」でひとつのセットと考えてください。最近はソープを使って「洗う」までしている方は増えていますが、まだ保湿まで手が届いてないように見えます。セットでケアすると、より快適になりますよ。
YES インティメイト・モイスチャージェル VM
オリビア:前篇の「洗う」ステップでもご紹介したブランド「YES」の保湿ジェルです。無着色で、とろっとした質感ですね。やさしく洗ったデリケートゾーンに塗布します。
こうした日常的な使い方のほかに、特にダメージを受けているときに試してほしい使い方があると、オリビアさんはいいます。
オリビア:特に乾燥を強く感じるときや、さらにはデリケートゾーンの脱毛後。脱毛にもいろんな方法がありますが、粉を吹いてしまうぐらい乾燥する方もいらっしゃいます。そうしたときはこのジェルをぬるま湯で溶いて、コットンシートにひたしたものを、外陰部に置きます。いわゆるコットンパック。スペシャルケアですね。
明日 わたしは 柿の木にのぼる フェミニンオイル
個性的な商品名の由来からうかがいましょう。
オリビア:福島の、本来だったら廃材になってしまう柿の皮と果実から取ったエキスを使用しています。こちらはオイルタイプの保湿剤で、私も愛用しています。保湿剤を選ぶポイントのひとつに使用感がありますが、ジェルがいいという方、オイルでケアするのが好きという方、それぞれ好みで選んでいただいていいと思います。妊娠後期で会陰マッサージをするときにオイルを使いたいという方にもおすすめです。
手に取ってみると、香りはすーっとしていながら、あたたかみがあるとろっとした質感です。
やさしく洗ったあとに水分を拭き取って、オイルで外陰部周辺をマッサージするように塗ってください。ただ表面に塗るだけだとベタつきを感じることもありますがマッサージしながら塗り伸ばしていくとだんだん浸透していきます。肌に保湿剤を吸収させるつもりでやってみてください。
マッサージすることによって、自分の手や指で触れるのも大事なポイント。
オリビア:保湿ができると肌がふっくらしてきます。自分でも弾力やふかふか感を感じてみるといいですよ。
bda ORGANIC オーガニック ケアバーム ティーツリー&シアバター
これまでデイリーケアの保湿アイテムを2商品教えてもらいましたが、セックスの前後に使える特別ケアのアイテムもあります。
オリビア:バームとは軟膏のことですが、こちらにはティーツリーの香りがついています。ティーツリーの精油は”万能のオイル”と言われていて、特にオーストラリアの家庭ではティーツリーオイルが必ず薬箱のなかにあって、切り傷や火傷に塗っているそうです。
セックスでこすれて痛くなってしまう方や、セックス後にヒリヒリしてしまう方、腟の周りから会陰部にかけて痛みが出る方は、このバームを塗布することをおすすめします。
オリビア:実際手に取ってみると最初は固いのですが、塗り伸ばすと本当にしっとりと伸びてくれます。いま痛みで困っている方は、性行為の前後に自分で塗ってケアする習慣を身につけるといいかもしれません。
デリケートゾーンケアだけではなく指先や唇といった、全身のいろんな箇所に使えるというのもポイント。
オリビア:本当に幅広く使えるバームで、ネイルケアやリップケア、それから爪にささくれができたり、小さな傷ができたりしたときにも使えるので、私も重宝しています。
昨今はドラッグストアなど身近なところでも販売されているのを目にします。
オリビア:こうしたアイテムが便利なのは、外出時。デリケートゾーンをすっきりさせたいというときに大活躍してくれます。
たとえば月経中、経血がナプキンと肌のあいだに張り付いていると、においや蒸れが特に気になるので、ウェットシートでさっときれいにできると、とても便利です。
また、セックスの前にシャワーを浴びる時間がないけどこのまま行為に進むには抵抗がある……というときにウエットシートで拭き取ると衛生的ですよね。
終わったあと体液が残っていて気になるという場合も、量がそれほど多くなければひと通り拭き取るだけでかなり快適になると思います。
ピュビケア オーガニック フェミニン コットン シート
オリビア:個包装になってるので、化粧ポーチの中に1個入れておけるコンパクトさがありがたいです。商品名にオーガニックと謳われているだけあって、1枚1枚のシートがオーガニックコットンでできているので、拭き取りのとき肌触りがいいのも魅力ですね。
個包装を開けると、さわやかな香りが漂ってきます。透けて向こう側がうっすら見えるぐらいの厚さですが、十分使えます。
たとえば折りたたんで一度拭き、さらに折りたたんでもう一度拭くというように、1枚で何回か使えます。大陰唇と小陰唇のあいだの溝やお尻の割れ目のほうなど、細かい部分までしっかり拭き取れます。
ただ、オーガニックのコットンを使ってるのでトイレには流せないため、備え付けのゴミ箱に捨ててください。
iroha インディメイトシート
1パックに、10枚のウェットシートが入っています。
オリビア:個包装ではありませんが、バッグやポーチにも十分入るサイズです。こちらのシートの便利なところは、使用後そのままトイレに流せる点。サニタリーボックスがないところでも、さっと使って流せるのが魅力ですね。
ウェットシートが活躍する場面は、意外と多くあります。シャワー施設が少ない山や海のレジャーから、熱が出てお風呂に入れずしかしデリケートゾーンに不快感があるときまで。
オリビア:防災グッズにデリケートゾーン用ウェットシートを入れておくのもいいと思います。
あと月経カップを使う方は、お手洗いのなかに洗面所が付いていない個室だと交換するのに困りますよね。そんなときはウェットシートを使って月経カップに付いた経血をぬぐって、再度装着する、というふうにも使えます。
今回はオリビアさんから、ソープ3点、保湿アイテム3点、ウェットシートが2点をご紹介いただきました。しかしこれは、近年たいへんな勢いで発売されているケアアイテムの、ほんの一部です。
オリビア:紹介した以外にも実はたくさんの種類があって、たとえば洗浄剤ならフォームタイプ、ジェルタイプのほか、泡立てて使うリキッドタイプや、乾燥が気になる方向けのオイルタイプがあります。保湿アイテムもジェル状や化粧水セラムなど、お肌のケアと同じぐらいのラインナップがあります。
自分の肌の悩み、トラブル、そして好みに合わせて選択できるだけの幅広い商品があるのは、よろこばしいことだと思います。
最後に、実際ケアするようになるとどんな変化があるのか、オリビアさんに教えてもらいましょう。
オリビア:日々のQOL(生活の質)が上がりますよね。常にお肌のコンディションがいいと、自分の機嫌もよくなります。デリケートゾーンは、お手洗いのたびに1日数回意識するパーツでもあるので、そこが快適だと本当に毎日過ごしやすくなると思います。
なんであれ、選択肢が増えるというのは大きなメリットです。
筆者も日ごろはデリケートゾーン専用ソープとして泡立てるタイプを使っていますが、朝の時間がないときのシャワーや夜の疲れ切っているときのお風呂などは、それすら面倒に感じます。そんなとき、ポンプを押せば泡が出てくるフォームタイプはとても便利。
これまでケアしてこなかっただけに、特別なことをしなければならないと考えるとハードルが上がって億劫に感じます。まずは自分が無理なくできる範囲ではじめるのがベター。快適さを実感すれば、すぐに習慣として身につくでしょう。
その先には、自分に合う、または自分の好きなアイテムを探求する楽しみが待っています。